【Review】創作・活動や民主主義のヒント―映像によるヨーゼフ・ボイス再考 text吉田悠樹彦

伝説の芸術家ヨーゼフ・ボイス、そして日本 芸術家ヨーゼフ・ボイスに関する必見のドキュメンタリー映画が公開される。印象深い編集を通じて伝説的な芸術家の創作の核心に迫り、その懐にはいっていくことができる。 ボイスは日本で人気

【Interview】「個の関係」から生まれる物語――『盆唄』中江裕司監督インタビュー text 若林良

東日本大震災から4年が経過した2015年、福島県双葉町の人々は散り散りに避難先での生活を送り、先祖代々守り続けてきた伝統「盆唄」存続の危機に心を痛めていた。 そんな中、100年以上前に福島からハワイに移住した人々が伝えた

【Review】『牧師といのちの壁』(加瀬澤充監督)―― 人を生に繫ぎ止めるもの text 長本かな海

うちの近所の弁当屋の息子が年明けに首を吊ったらしい。まだ19歳だったらしい。自然が豊かなことで有名な私が住んでいる離島では、都会よりもずっと人の死が身近だ。しょっちゅう葬式の案内を見るし、みんな知り合いなので葬式に行く機

【連載】「視線の病」としての認知症 第6回「天国の待合室」にて text 川村雄次

クリスティーンと石橋典子さん 「視線の病」としての認知症 第6回「天国の待合室」にて <前回 第5回 はこちら> 2003年 2月23日。 この日、認知症の人の語る時代の扉が開いた。 その日の午前11時半、私はブリズベン

【Interview】内なる旅で宇宙とピンポンする 『500年の航海』キドラット・タヒミック監督 インタビュー

ラヴ・ディアス、ブリランテ・メンドーサなど、近年世界の注目を集めるフィリピン・インディペンデント映画。そのシーンの中で精神的支柱となっている映画作家がキドラット・タヒミックだ。フィリピンの反独裁政権運動や、世界各地の先住

【Interview】人はなぜ[自殺する/生きようとする]のかは、わからない〜映画『牧師といのちの崖』加瀬澤充監督

『牧師といのちの崖』という映画が、いまポレポレ東中野で公開されている。 和歌山県・白浜にある観光名所・三段壁。自殺の名所と言われるこの場所で、自殺志願者に声を掛け、彼らの生活再建を目指し共同生活をおくる藤藪庸一牧師と、そ

【Review】 その術を知らない象の咆哮ーー『象は静かに座っている』 text 井河澤 智子

棋士は先を読んで駒を指す。それこそ何十手先をも読む。 この物語は「読む先がない」状況に追い込まれた人々の群像劇である。 どん詰まり、一瞬先すら見えない彼らの行動は全く突発的である。彼らが何をしでかすかをただ見つめる、即ち

【Review】「アイドルになりたい」想いの裏側にあるもの――『世界でいちばん悲しいオーディション』text 宮﨑千尋

  努力だけではどうにもならないことがある。受験、就職、恋愛…、そんな挫折を味わった経験が誰しもあるのではないか。この映画は「アイドルになりたい」24人の少女たちがまさしく、努力だけではどうにもならない、でも、

【Review】歌を見つめる映画のまなざしに射すひかり 『ひかりの歌』 text 菊井崇史

日常ということばがおもいおこさせる光景や、そこに寄り添う人がいること、たとえば、アパート近辺の公園のベンチや、勤務先から帰宅する夜の街路、コンビニの駐車場の角、行きつけの食堂で、ひとり、ふたり、あるいは幾人で今日をうつろ

【Book Review】身体によって身体を思考する——室野井洋子『ダンサーは消える』text 中根若恵

ダンスは常に非常である。 我々は圧倒的な日常の中に生きている。 非常の身体は忘却される。 私たちの多くは、自分の身体をおのずとこの場に存在するものと捉え、その自明性に何ら疑いをもたない。例えば、道を歩く、階段を上がる、シ

【Review】クリエイティヴへの指針「ヴィヴィアン・ウェストウッド 最強のエレガンス」をみよ text 吉田悠樹彦

斬新なファッション、パンク誕生、気になる日々はこのように生まれた 英国はファッションの大国である。“ダンディズム”のボー・ブランメルは良く知られている。男性でもスーツはイタリア物よりは英国物という意見が強いぐらいだ。 ヴ

【Review】愛を求め続けた思考の軌跡ーー『クマ・エロヒーム』text 加賀谷健

 主よ、わたしは、どこからここに—————この死んでいる生と言うべきか、それとも生きている死と言うべきか—————来たかをしらない。          —聖アウグスティヌス『告白』—    人はふとした瞬間に不

【連載】「視線の病」としての認知症 第5回 「その人」に会いに行く text 川村雄次

ブリズベンの街 「視線の病」としての認知症 第5回 「その人」に会いに行く <前回 第4回はこちら> 2003年2月22日、私はオーストラリアへと向かう飛行機の中にいた。夜9時半に真っ暗な関西空港を飛び立って、翌朝5時、

【Review】宝物が生まれる瞬間ーー『旅するダンボール』 text 福井さら

   様々な年代の人々が、それぞれの「宝物」についてはにかみながら説明している。そんな冒頭からこの「旅するダンボール」は始まってゆく。彼らは各々、なぜそれが宝物なのかを聞かせてくれるのだが、ものが宝物になるには、その人に

【INTERVIEW】『旅するダンボール』を巡って 岡島龍介(ディレクター、エディター、シネマトグラファー) × 島津冬樹(アーティスト) × 汐巻裕子(株式会社ピクチャーズデプト代表、映画バイヤー、映画プロデューサー)

映画『旅するダンボール』より 映画『旅するダンボール』を巡って 岡島龍介(ディレクター、エディター、シネマトグラファー) × 島津冬樹(アーティスト) × 汐巻裕子(株式会社ピクチャーズデプト代表、映画バイヤー、映画プロ

【Review/Interview】 幻を見る瞳にうつされるもの〜 井上春生監督にきく映画『幻を見るひと』 text 菊井崇史

「京都に龍を探しにいきませんか」という導きを端緒として、京都におもむいた詩人吉増剛造の営為に迫る映画『幻を見るひと』の旅ははじまった、本作のエグゼクティブプロデューサーである詩人城戸朱理はそう語っている。ここでの「龍」と

【連載★最終回】「ポルトガル、食と映画の旅」 第21回 旅の終わりは、次の旅の始まり text 福間恵子

「ポルトガル、食と映画の旅」 第21回(最終回)旅の終わりは、次の旅の始まり <前回 第20回 はこちら> ポルトガルに通うようになってもう15年がすぎた。その間に13回の旅をして、日数は220日におよぶ。行きはじめて間

【連載】「視線の病」としての認知症 第4回「逆転の発想」が切り拓いた新時代 text川村雄次(NHKディレクター)

2001年 ニュージーランドの国際会議で発表した石橋さん 「視線の病」としての認知症 第4回 「逆転の発想」が切り拓いた新時代 (前回 第3回 はこちら) 認知症というのは、自分が自分でなくなっていく病気だと、多くの人が

【Interview】歌は、歌い続けることで守られる 『あまねき旋律(しらべ)』アヌシュカ・ミーナークシ&イーシュワル・シュリクマール監督インタビュー text 若木康輔

インドのドキュメンタリー映画『あまねき旋律(しらべ)』が、封切られると同時に高い評価を受け、順調にロードショー中だ。 昨年開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭で〈アジア千波万波〉部門奨励賞と日本映画監督協会賞を受賞し

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.21 ブリランテ・メンドーサ監督(TIFFコンペ審査委員長)インタビュー text 金子遊

2005年の長編映画デビュー以来、『フォスター・チャイルド』(07)や『サービス』(08)や『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』(09)といった、いわゆる「スラムもの」のリアリティあふれる作品群で国際的な評価を高めて

【連載】ドキュメンタリストの眼⑳ ジョージア(グルジア)映画祭 はらだたけひでインタビュー text 金子遊

10/13(土)から東京・神保町にある岩波ホールで「ジョージア(グルジア)映画祭」が2週間の日程で開催される。劇場未公開作品ばかりを20本近く集めた本格的な映画祭である。1年以上前から映画祭を準備し、ジョージアの監督たち

【連載】「ポルトガル、食と映画の旅」第20回 ポルトガルという場所 text 福間恵子

 アヴェイロの運河に架かる橋。小船に乗る漁師が櫂を持っている。 「ポルトガル、食と映画の旅」 第20回 ポルトガルという場所  (第19回 からつづく) 2018年の新年を、アソーレス諸島で一番気に入った島テルセイラです