【Review】人の心をざわつかせる場所〜『アラヤシキの住人たち』 text 皆川ちか

雪の降り積もった山道を、ヤギを連れて奥の方へ、奥の方へと進んでいく一行。先頭を歩くのは賢者のような、「ロード・オブ・ザ・リング」に出ていてもおかしくないような風貌の初老の男性。続く若い女性ふたりとヤギ。穏やかとも不穏とも

【Interview】映画だからこそ、「物語」を伝えられる―『皆殺しのバラッド』シャウル・シュワルツ監督インタビュー text若林良

シアター・イメージフォーラムほかで現在公開中の『皆殺しのバラッド』は、メキシコの「麻薬戦争」を扱ったドキュメンタリー作品だ。2006年12月、メキシコ政府が麻薬産業の撲滅のため、密売人たちに宣戦布告をおこなったところから

【Interview】福島の避難指示区域にひとり暮らす男を追った『ナオトひとりっきり Alone in Fukushima』 中村真夕監督インタビュー

福島第一原発から12キロの福島県富岡町。現在も「避難解除指示準備区域」に指定され、夜間は人の立ち入れない無人の町にひとり残り、ダチョウや牛、猪豚や犬猫と暮らし続ける男がいる。松村直登さん、55歳。『ナオトひとりっきり』は

【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第7話 text 中野理惠

開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして〜 <前回(第6話)はこちら> 第7話 田中美津の『いのちの女たちへ―とり乱しウーマン・リブ論』 前回の最終章の流れで、詩集ではないが、一冊だけ触れておき

【Review】ランズマンとワイズマンの共通点〜『SHOAH』『ソビブル、1943年10月14日午後4時』『不正義の果て』連続上映に寄せて〜text 山石幸雄

2月に渋谷のシアター・イメージフォーラムで行われたクロード・ランズマンの連続上映は快挙であった。 長らく見ることができなかった『SHOAH(ショア)』の再上映をはじめ、これまで日本未公開の『ソビブル、1943年10月14

【Interview】『繩文号とパクール号の航海』 水本博之監督インタビュー

「グレートジャーニー」で知られる探検家・関野吉晴は、2004年から「新グレートジャーニー 日本列島にやって来た人々」と名付けた、日本列島にやってきた古代人の足跡の追体験行をスタートさせた。北方ルート、南方ルートに続いて2

【Review/Interview】ヘイトスピーチに対抗する人たちを扱ったドキュメンタリー『レイシスト・カウンター』わたなべりんたろう監督 text 名久井梨香

流行語大賞にノミネートもされた「ヘイトスピーチ」。社会問題に疎い若者でも、新大久保辺りで行われているぐらいは知っているだろう。しかしどれだけの人が、ヘイトスピーチの実態を理解しているだろうか。 2013年2月、ヘイトスピ

【Review】私たちはいかに「敵」と向きあうか―鎌仲ひとみ監督『小さき声のカノン』に寄せて text若林良

東日本大震災、またそれに端を発した東京電力福島第一原子力発電所事故をうけて、2015年3月現在に至るまで「原発」をテーマとした数々の映画が制作された。 たとえば、放射線の影響に焦点をあてた劇映画『おだやかな日常』(201

【News】『フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように』 チョンジュ国際映画祭上映決定!

近代メキシコを代表する画家であるフリーダ・カーロの遺品を、世界的な写真家・石内都が撮影する過程を捉えたドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように』が、第16回チョンジュ国際映画祭(2015.4.30

【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第6話 text 中野理惠

開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして〜 <前回(第5話)はこちら> 第6話 お金をいただく人生の始まり 1972年、新卒で就職したのは、大手建築会社であった。志望していた新聞社が、その年だけ

【Interview】「いのちを肯定する」というメッセージを届けたい〜『スーパーローカルヒーロー』主演ノブエさん&田中トシノリ監督

先日、『スーパーローカルヒーロー』の試写を拝見し、ぜひ、主演のノブエさんと田中監督にお会いしたり、登場するミュージシャンのライブを観たいとおもっていた。折よく「東京公開記念ライブイベント」が開催されたので、足を運び、イン

【Review/Report 】音楽で人を包む、尾道の『スーパーローカルヒーロー』text 小林蓮実

魅力に富む、錚々たるミュージシャンが名を連ねるドキュメンタリー。山に抱かれ、坂から海が見渡せる尾道の、CDショップオーナーとは? まずは、好ましいミュージシャンが名を連ねるドキュメンタリーということに惹かれた。EGO-W

【Review】むきだしの混沌――アレクセイ・ゲルマン監督作品『神々のたそがれ』 text 越後谷研

  その名はゲルマン。アレクセイ・ゲルマン。我々の前に、60年目にしてようやく現れた曙光。あの怪物的小説を映画化できる、唯一にして最高最良の映画監督。ナチスの戦法に想を得て、アレクサンドル・デュマを換骨奪胎し、

【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第5話 text 中野理惠

開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして〜 第5話 大島渚監督  <前回(第4話)はこちら> 大島さんの著書では、もうひとつ、記憶に残っていることがある。松竹の助監督仲間で脚本を批評し合っていた

【対談】佐々木誠×原一男 『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』に関する、極私的対談

対談:佐々木誠×原一男『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』に関する、極私的対談 これまでに『Fragment』(06)、『INNERVISION』(13)、『バリアフリーコミュニケーション 僕たちはセックス

【Review】『イザイホウ』と『イザイホー』のあいだ text 指田文夫(大衆文化評論家)  

今、日本のホテルなど結婚式場には、「三種の神器」があり、それがないと若者は使ってくれないという。外国人の牧師による式、コーラス隊とオルガン、そして式を公衆に見せるロビー、あるいは終了後に映画『風と共に去りぬ』のように降り

【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第4話 text 中野理惠

開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして〜 第4話   映画との出会い  <前回(第3話)はこちら> このあたりで映画との出会いを記しておきたい。 最も幼い映画についての記憶は、村の日枝神社のお

【Interview】僕も「みんなの学校」で学びながら映画を作った〜『みんなの学校』真鍋俊永監督

東京・ユーロスペースで絶賛公開中の映画「みんなの学校」。ふつうの子供も障害のある子供もみんなが同じ教室で学ぶ大阪市の「大空小学校」の1年間に密着した作品だ。もともと関西テレビの番組として放送され、再編集のうえ劇場公開され

【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第3話 text 中野理惠

開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして〜 第3話   初めてのニューヨーク行き<前回(第2話)はこちら> 『ハーヴェイ・ミルク』と出会ったニューヨークで短期間ながら暮らしたのは、ひょんな理由か

【Review】新たな時代の民族意識は可能なのか「ドキュメンタリー・ドリームショー アラブを見る」を観て text 足立正生

初めに 昨年末、東京の新宿で、山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加した作品の中からアラブ作家たちのドキュメンタリー群が上映された。それを連日のように観に出かけて、あらためて「映画とは何か」「ドキュメンタリーを作るとは何か

映画『波伝谷に生きる人びと』劇場公開支援クラウドファンディングがスタート

2015年夏、ポレポレ東中野で公開予定作品『波伝谷(はでんや)に生きる人びと』。震災までの3年間、南三陸の小さな漁村の日常を追ったドキュメンタリー映画です。1月27日にクラウドファンディングを開始しました。3月31日まで

【Review】抵抗の報酬と「三里塚」という精神の問題  〜映画『三里塚に生きる』に寄せて〜 text マーク・ノーネス(ミシガン大学教授)

日本をはじめとする東アジアの映画研究者であり、小川プロ研究の第一人者でもあるマーク・ノーネス氏(ミシガン大学教授)が『三里塚に生きる』(大津幸四郎・代島治彦監督/順次全国公開中)の海外プレスシート用に書き下ろしたレビュー