【Review】詩人が誘われる記憶の街――ビー・ガン『凱里ブルース』text 村松泰聖

9年の刑期を終えて出所を果たした、とある詩人の男。ところが、彼の妻はすでにこの世を去っており、家を奪われた弟の態度は冷たく素っ気ない。孤独となった詩人は、亡き母の追憶に浸りながら、故郷に小さな診療所を開くことになる。貴州

【Review】 『セノーテ』― 潜り、蘇る古代マヤの両義性 text 長本かな海

はじめてスキューバーダイビングをした時、はじめてモノをモノとしてみたような気がした。海中の生物の知識がない私にとって海の底は混沌への入り口だった。ゴツゴツした岩に張り付いたいびつな物体や、なめらかでヌルヌルしたもの、触っ

【News】『ゲッベルスと私』のシリーズ第二弾が2020年夏に完成!サニーフィルムが日本配給権を取得!

 2018年に大ヒットを記録した『ゲッベルスと私』。シリーズ待望の第二弾『Ein jüdisches Leben』(英題 A JEWISH LIFE)が2020年夏に完成することが決定し、製作会社のブラックボックス フィ

【Review】ジョゼフ・ロージー『恋』の独創的な構成について text 井澤佑斗

 窓ガラスに水滴が映っている。途端に、不協和音から始まるピアノの独奏が開始される。その窓ガラスにオーバーラップして『恋』のタイトル――原題『The Go-Between』――が映し出される。 その不吉なテーマ曲ひとつだけ

【Report】IFFR&Berlinale2020 <ベルリン国際映画祭編> text歌川達人

世界の多様性に出会える社会派ベルリン国際映画祭 今年で第70回を迎えるベルリン国際映画祭。今年からArtistic Directorが交代し、ロカルノ国際映画祭でArtistic Directorを務めていたCarlo

【Book Review】「映画館プログラム」という知られざる魅惑を求めて――『映画館と観客のメディア論 戦前期日本の「映画を読む/書く」という経験』 text 大内啓輔

かつて「映画館プログラム」という読み物があった! たとえば今、私たちが映画館に足を運んで映画を観るとしよう。そのとき、事前にその映画について、何一つの知識を入れずに鑑賞することは不可能に近いはずだ。いわゆる一般的に劇場公

【Report】IFFR&Berlinale2020 < ロッテルダム国際映画祭編> text 歌川達人

  映画制作者の私は、常日頃から諸先輩方に「若いうちに海外の国際映画祭へ行って勉強してきた方が良いよ」と言われていた。 そんな折、運よくロッテルダム国際映画祭で自身の短編「時と場の彫刻 (英題The Sculp

【Review】音楽が「差別」と闘うとき――映画『白い暴動』 text 日方裕司

   映画『白い暴動』の冒頭で、ステージに上がる前の緊迫感と血気盛んなオーディエンスの姿に多くのパンクスが心躍るかもしれない。しかしこのタイトルから推測されるような、日本でもお馴染みのパンクバンド、ザ・クラッシュのドキュ

【column】現代日本最高の詩人吉増剛造がNYへ 米国前衛映画界の父・詩人の故ジョナス・メカスを悼む 映画『眩暈(めまい) Vertigo』について text 井上春生

2018年2月、ある仕事で訪れていたドイツから羽田に帰国し、そのまま成田に移動してニューヨークに向かった。詩人の吉増剛造さんを1年かけて撮った前作「幻を見るひと」がニューヨークシティインディペンデント国際映画祭に招待され

【News】金子遊の映像作品がWEBで配信スタート

   2020年3月から、幻視社が配給する映像作家・金子遊の長編ドキュメンタリー、劇映画、実験映画、民族誌映像など10数本が「Vimeoオンデマンド」にて、WEB配信されます。新型コロナウィルスの影響で、映像作品の上映機

【Report】Festival Film Dokumenter2019に参加して text 波田野州平

私はフィールドワークをもとに土地の歴史を掘り起こし、そこで見聞きしたことをフィクションとドキュメンタリーが渾然となった手法で、個人の記憶から集合的記憶を導き出そうとする映画を制作しています。そのようにして制作した『影の由

作品募集締切迫る!6月20日まで 東京ドキュメンタリー映画祭2020

今年も開催! 東京ドキュメンタリー映画祭2020 作品募集を開始します! 募集期間  2020年2月20日〜6月20日 メールと動画URLで簡単に応募! 2020年度の冬、入選作40本前後を都内の劇場で一挙に上映します!

【自作を語る】『愛国者に気をつけろ!鈴木邦男』text 中村真夕(本作監督)

私が鈴木邦男を撮影し始めたのは、2年ほど前の夏からだった。鈴木は父の友人で以前から知っていたが、なぜこの人は右翼のはずなのに右も左も関係なく、様々な人たちと仲良くできるのかを不思議に思っていた。そして以外にも彼単独のドキ

【Interview】伝統人形劇“布袋戯”の来し方行く末――老人形師の想いを包みこむ監督の布袋戯愛 『台湾、街かどの人形劇』楊力州(ヤン・リージョウ)監督インタビュー

楊力州(ヤン・リージョウ)監督 伝統人形劇“布袋戯”の来し方行く末 ――老人形師の想いを包みこむ監督の布袋戯愛 『台湾、街かどの人形劇』 楊力州(ヤン・リージョウ)監督インタビュー (取材・監督近影撮影・文:稲見公仁子)

【Interview】声なき声に祈りを、更生施設から放たれる少女たちの静かな叫び――『少女は夜明けに夢をみる』メヘルダード・オスコウイ監督インタビュー text 柴垣萌子

『少女は夜明けに夢をみる』は、メヘルダード・オスコウイ監督が2016年に制作したドキュメンタリー作品である。 これまでも、イランのケシャム島で厳格な宗教規則と共存する女性を写した『THE OTHER SIDE OF TH

【Interview】「想像」を駆使して世界と向き合うこと――『ドリーミング村上春樹』ニテーシュ・アンジャーン監督インタビュー text 若林良

  「これは責任と名誉の問題です。どんなに気が進まなくても、みみずくんに立ち向かうしかないのです。もし万が一闘いに負けて命を落としても、誰も同情してはくれません。もし首尾良くみみずくんを退治できたとしても、誰も

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.23 タル・ベーラ(映画監督)インタビュー text 金子遊

ハンガリーが生んだ孤高の映画作家タル・ベーラ。日本では『ヴェルクマイスター・ハーモニー』(二〇〇〇年)や『倫敦から来た男』(二〇〇七年)といった代表作が公開されているが、初期の作品はまだ未紹介になっている。二〇一一年に完

【新刊】ドキュメンタリーマガジン neoneo12号 総特集「沖縄のドキュメンタリー」

9月中旬発売! ドキュメンタリーマガジン「neoneo」#12 総特集 「沖縄のドキュメンタリー」 お待たせいたしました! 1年ぶりのドキュメンタリーマガジン「neoneo」12号は、「沖縄とドキュメンタリー」の総特集で

【Interview】ボクシングが好きだから、おかしいことはおかしいと伝えたい 『破天荒ボクサー』武田倫和監督インタビュー

インタビュー記事の前に、やや長い前説を。 山口賢一という、かつて名門・大阪帝拳ジムに所属するプロボクサーがいた。『破天荒ボクサー』は、彼の現役生活の終盤の活動を追ったドキュメンタリーだ。 数年前、ジムがなかなかタイトルマ

【Review】 狩り、捌き、食う。グリーンランドのシンプルな生活 ―― 『北の果ての小さな村で』 text 長本かな海

グリーンランドと聞いてすぐにイメージが浮かぶ人は少ないと思うが、私が思い出すのは昔観たグリーンランドに魅了され移住したイタリア人のドキュメンタリーだ。そのイタリア人は「グリーンピースが鯨漁やアザラシ漁に抗議をしているが、

【連載】ドキュメンタリストの眼 vol.22 アミール・ナデリ(映画監督)インタビュー text 金子遊

イラン映画を代表するアミール・ナデリ監督。2018年の東京フィルメックスの「特集上映 アミール・ナデリ」では、監督の初期の代表作『タングスィール』『ハーモニカ』といった作品が並び、さらに上映されることの珍しい映像詩的な作

【Review】生きることに向き合う人たちへ!『ラブゴーゴー』『熱帯魚』(チェン・ユーシュン監督)text 住本尚子

『ラブゴーゴー』 ケーキを食べた時の、あの幸せな気持ちを思い出す。甘さが口の中にどんどん広がっていって、いつしか、すっと消えていく。またあの甘さが忘れられなくて、ふたくち、みくち、と口にほおばる。 『ラブゴーゴー』の登場