【Review】マンガになろうとした“聖なるバカ”──冨永昌敬監督『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』 text 常川拓也

“笑い”とは、もともと場の秩序を破壊するマトモじゃない行為に対して引き起こされる現象である。常識や予定調和から逸脱した時に笑いは発生する。だとすれば、本質的にギャグとは実験的、あるいは前衛的なものである。代表作『天才バカ

【Review】悪ふざけの中に―クリス・モーカーベル監督『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』 text くりた

アート(芸術)とは何か、また特定の作品を指して「それ」が果たしてアートであるかどうかを議論する人がしばしば存在するが、その度に私は「なんという不毛な議論なのだろうか」と思わずにはいられない。なぜ事あるごとに芸術を承認した

【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第27話 text 中野理惠

開拓者(フロンティア)たちの肖像中野理惠 すきな映画を仕事にして  <前回 第26話はこちら> 第27話 『ビヨンド・サイレンス』 『ビヨンド・サイレンス』「素晴らしい映画じゃない」 と、快く時間を割いて見てくれたそのプ

【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第26話 text 中野理惠

1997年カナダ映画「百合の伝説 シモンとヴァリエ」(1997年日本公開/ジョン・グレイソン監督)を公開した頃のスタッフと。この映画では監督と主演俳優が来日し、築地を案内した記憶がある。 開拓者(フロンティア)たちの肖像

【Report】たくさんの「手のひら」~3.11映画祭 初日レポート(2016年3月11日)  text 大久保 渉

3.11映画祭の会場:アーツ千代田3331 3.11映画祭。それはたとえていうならば、「パー」のような映画祭だと思った。「グー」でもなく「チョキ」でもなく、「パー」。それはあまりに突拍子のない説明になっているかもしれない

【Review】「無音」と「叫び」の境を生きる 原村政樹監督『無音の叫び声』 text 菊井崇史

木村迪夫氏 田植えの間の休息 ©『無音の叫び声』製作委員会 「戦後、痛切なことばかり多かった時間を経て、思想というもの、それを生かしめる生命力を、もはや虚像ではなく自分のものにする以外、生きる方法がなくなったとき、生活の

【Book Review】 沖縄イメージの攪乱:『las barcas 別冊』text 松田潤

根間智子「paradigm」  ■変容する沖縄イメージ 先日都内で公開された根間智子の写真展示「paradigm」(表参道画廊・1月18〜30日)と奥間勝也の監督作品『ギフト』(2011)、『ラダック:それぞれの物語』(

【Review】里山で生まれたハイブリッドな関係-小林茂監督『風の波紋』text 佐藤奈緒子

©カサマフィルム  新潟県にある越後妻有(えちごつまり)。ここは日本有数の豪雪地帯であり、冬は多い時で4メートルを越える雪が積もる。しかし夏にもなると緑が生い茂り、朝夕には山際から差す日の光が棚田を照らす美しい光景が広が

【連載 批評≒ドキュメンタリズム③】クメール民話とアピチャッポンの東北 text 金子遊

  世界中に点在する「東北」 どのような国家や地域であっても「東北」をもっているように、それがどこの誰であっても、わたしたちは内なる「東北」をもっている。 それは、ただ単に中央からながめられたときに、地理的な周縁や辺縁と

【Review】「あなたに起きていてほしい」-アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『光りの墓』text 長谷部友子

世界があるのではない。あなたが世界を見るから、そこに世界が立ち現れる。 ある意味、到達を感じさせる作品であった。雑味はなく麗しく、かつてのむき出しの激しさは鳴りを潜め、映画を構成するあらゆる要素の完成度が高い。『ブンミお

【Interview】 今を考えるための映画監督・佐藤真——「日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学」編集者・清田麻衣子さん

90−00年代に、日本を代表するドキュメンタリストのひとりとして時代を駆けた佐藤真。その仕事を、未発表原稿や寄稿、批評など、さまざまな角度からまとめた「日常と不在をみつめて〜ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学」が、こ

【連載】「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー」第16回 『あゝ‼ この一球  近藤唯之がつづるプロ野球近代名勝負』

川上、長島、王、金田、村山、江夏……プロの頂点に立った男たちのドラマを、伝説の野球記者が名調子で描いた〈昭和スポーツ講談〉。 プロ野球ものは、聴くメンタリーの中でも人気ジャンル 廃盤アナログレコードの「その他」ジャンルか

【Review】僕らはみんな中毒だーー『あまくない砂糖の話』(デイモン・ガモー監督)text 落合尚之

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【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして 〜 第25話 text 中野理惠

開拓者(フロンティア)たちの肖像中野理惠 すきな映画を仕事にして  <前回 第24話はこちら> 第25話  ソクーロフ作品の配給  その1 前回最終段落内の間違いとお詫び 前回内容中、題名に間違いがあったので、まず、訂正

【Interview】国家に長い間拘束された人の傷は深い。それを伝えたかった~『ふたりの死刑囚』齊藤潤一プロデューサー・鎌田麗香監督インタビュー

鎌田麗香監督(左)齊藤潤一プロデューサー 昭和36年に起きた、名張毒ぶどう酒事件。東海テレビは長い報道と取材の蓄積に基づいた結果、無実を訴え続ける奥西勝死刑囚は冤罪であるという立場を取り、ドキュメンタリー番組を継続して製

【Interview】私たちが変わる第一歩は、まず状況を知ること―『バナナの逆襲』フレドリック・ゲルテン監督インタビュー text 若林良

「バナナをめぐる“甘くない”ドキュメンタリー」と呼ばれる、スウェーデン発のドキュメンタリー『バナナの逆襲』が、現在東京を中心に公開されている。口当たりがよく保存も簡単なため、日本人にとっても身近な存在であるバナナ。しかし

【Review】彼女が抱きしめたもの_海南友子監督『抱く{HUG}』text西田志緒

この人はその身体に、自然の脅威と恩恵とを一度に抱いているみたいだーー試写を終えて、そんなことを思った。 『抱く{HUG}』で、海南友子監督は自らの妊娠・出産を題材にセルフドキュメンタリーを撮った。新しい命を産む女ならでは

【Review】 観察映画『牡蠣工場』(想田和弘監督)体験記〜変わりゆく世界に、確かに存在する「希望」の兆し text 成宮秋祥

©Laboratory X, Inc. 『牡蠣工場』を観てみたいと強く意識したのは、偶然にも映画館で予告編を観たからだ。牡蠣の養殖業を営む人々を映す映像から、何とも表現の難しい力強さを感じた。また、映画の題名にも惹かれた

【連載】「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー」第15回『ビートルズ物語』

 ビートルズがアメリカに初上陸、大ブームを巻き起こした1964年に緊急発売されたドキュメント・レコード。“ファン向けグッズ”のパイオニア! ザ・ビートルズ史上、最も聴かれないレコード 廃盤アナログレコードの「その他」ジャ

【Interview】「僕らの根っこはシュルレアリスムとアヴァンギャルド」〜『断食芸人』足立正生(監督)&山崎裕(撮影)text 小林蓮実

1960年代より数多のアヴァンギャルド(前衛)映画を生み出し、PFLP(パレスチナ人民解放戦線)や日本赤軍とともにパレスチナ革命に身を賭した足立正生監督。レバノンでの3年間の禁固刑、強制送還後にも偽造私文書行使(偽造され

【Report】ベルリン国際映画祭〜近年の傾向とヨーロピアン・フィルム・マーケットの現在 text 植山英美

ベルリン国際映画祭メイン会場 ベルリン国際映画祭に行ってきた。海外にドキュメンタリー映画を紹介、販売するという仕事をしているので、年初のロッテルダムやベルリンではじまり、カンヌから、秋は釜山、東京とアジアのマーケットと、

【Pick up】発表! わが一押しのドキュメンタリー2015

例年200本以上、テレビを含めるともっとたくさんの本数が上映・放送されているドキュメンタリーの中から、皆様の「ベストワン」をうかがう企画、「わが一押しのドキュメンタリー」。今年も劇場公開作品から一般には知られていない作品