【Review】南北分断の下に暮らす女性の「生き様」とらえた『マダム・ベー –ある脱北ブローカーの告白-』 (ユン・ジェホ監督)text 小林蓮実
来日したユン・ジェホ監督(6月7日、ユーロライブにて)「脱北」した「ブローカー」。それだけで、禍々しさを感じる人もいるかもしれない。わたしは、『neoneo』2016 WINTER号(No. 08)総特集「アジアのドキュ
【連載】「ポルトガル、食と映画の旅」第8回 ポルトガルのフィルムアーカイヴ text 福間恵子
リスボンのフィルムアーカイブ 階段福間恵子の「ポルトガル、食と映画の旅」第8回 ポルトガルのフィルムアーカイヴ(第7回に続く)<前回(第7回)はこちら>2016年12月29日、わたしと夫が観たいポルトガル映画を4本にしぼ
【Review】新しいうたよ眼ざめよ 映画『SHIDAMYOJIN』(遠藤ミチロウ、小沢和史監督)text 鈴木並木
20代の頃。どの本に載っていた言葉だとか、正確な文言だとかは記憶していないのだけど、大江健三郎の小説に出てきた、「どんなに偉くなったからといって、誰か自分の身代わりになって死んでくれるひとがいるだなんて思い上がってはいけ
【連載】ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー 第25回 『日本仁義全集』
渡世人が初対面の相手に行う挨拶を仁義と言う。古くからの作法に則った口上からテキ屋、愚連隊のそれまで、昭和の仁義を網羅した異色盤!10種以上の仁義口上が一枚のLPに廃盤アナログレコードの「その他」ジャンルから、ドキュメンタ
【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜 中野理惠 すきな映画を仕事にして 第48話、第49話
1964年国立近代美術館前にて ミロのビーナスを見に母と上野に行った。開拓者(フロンティア)たちの肖像〜 中野理惠 すきな映画を仕事にして <前回(第46話 第47話)はこちら>第48話 『美しい夏キリシマ』
【Report】周到に仕組まれた驚き——IFF2017 ミヒャエル・グラヴォガー『無題』 text 早川由真
それほど期待して観始めたわけではなかった。日本においてほとんど紹介されていないミヒャエル・グラヴォガーという名前に対し、いきなりその遺作から接するという躊躇もあった。グラヴォガーはオーストリアの映画作家であり、近年『パラ
【連載】「ポルトガル・食と映画の旅」第7回 フォンタイーニャスを探して text 福間恵子
ポルトガル、食と映画の旅第7回 フォンタイーニャスを探して<前回 第6回 はこちら>ペドロ・コスタの作品を初めて観たのは、2004年3月のアテネフランセでの特集上映だった。『ヴァンダの部屋』(2000)が劇場公開されるの
【Review】カメラからのまなざし、カメラへのまなざしーー映画『トトとふたりの姉』text 菊井崇史
10歳の少年トトとふたりの姉、14歳のアンドレアと17歳のアナは、ルーマニアの首都ブカレスト郊外のスラム街一角、水道もコンロもないワンルームに暮らしている。両親は不在だ。母ペトラは麻薬売買の罪で服役中であり、トトにとって
【Interview】メイシネマ祭の原点を語ろう〜主催者・藤崎和喜さん(5/3−5開催)
毎年、5月の連休中になると東京の下町、江戸川区の公民館で〈メイシネマ祭〉が行われます。小岩でガスとガス機器の販売をされている藤崎和喜さんが一人で始められ、ドキュメンタリー映画のファン、地域の人たち、また映画関係者の支持を
【自作を語る】岩手県大槌町の風景を記録した映画『ちかくてとおい』 text 大久保愉伊
13年12月、姪が産まれました。震災により大きな喪失を感じていた私にとって、彼女が生まれたことは、震災後最も嬉しい出来事の一つでした。小さな手足をばたつかせたり、ぐっすり眠る姪の姿。そんな姪の姿を見ながら、故郷大槌で生き
【Book】私たちが新しく手に入れたガイドブック 『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』(西村智弘・金子遊 編) text 野村建太
幸運なことに、本書『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』で取り上げられた作品の多くを、これまでに見る機会があった。東京でジョナス・メカスの作品が上映されれば可能な限り足を運んだが、いつも会場はそれなりに混み合っていたこ
【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜 中野理惠 すきな映画を仕事にして 第46話、第47話
1990年頃の筆者(撮影:柴 洋子)開拓者(フロンティア)たちの肖像〜 中野理惠 すきな映画を仕事にして 前回(第44話 第45話)はこちら第46話 発行した3冊の書籍のこと母の一言「まっ、いいカオしているから大丈夫だろ
【Review】郷愁から遠く離れて――富田克也監督『バンコクナイツ』text 若林良
まず、「地方」ということばについて、それが何をしめしているか、その内包する意味について考えてみたい。そもそも、「地方」と口にするとき、わたしたちは何を求めているのだろうか(ここでの「わたしたち」とは、関東付近の在住者を包
【連載】ポルトガル、食と映画の旅 第6回 ミーニョの旅の実り text 福間恵子
地方名は、大文字アルファベット・赤字で記しました。ポルトガル、食と映画の旅第6回 ミーニョの旅の実り2005年2月から3月にかけて、2週間の旅程で北部ミーニョ地方(Minho)をひとりで訪ねた。ミーニョは、リスボンに次ぐ
【Report】なぜかれは赤の裃で登場したか――「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリーatポレポレ坐」vol.3 text 萩野亮
鬼太鼓座の和太鼓の轟きとともに、赤鬼の面をかぶってワカキコースケは入場してきた。本誌「neoneo web」で連載中の「ワカキコースケのDIG! 聴くメンタリー」のイベント版、第3回。この日は2月4日、節分の翌日というわ
【連載】「ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー」第24回 『LENIN SPEECHES RECORDED 1919-1921』
1917年、ロシア革命が起こる。指導者レーニンは帝政を打倒した後も、精力的に演説をレコードに吹き込んでいた。これこそ、まさに歴史的録音。赤いレコードを埼玉で見つけた廃盤アナログレコードの「その他」ジャンルから、ドキュメン
【Review】鮮やかな手さばき〜小森はるか監督『息の跡』text 長谷部友子
東日本大震災から6年が経つ。震災について多くの人が様々なことを言ったが、私は未だその言葉を素直に聞けずにいる。喪失の悲しみ、原発や政府への批判、利権をめぐる言説、時が経つにつれ被災者を非難する言葉があり、また被災地を離れ
【Review】イメージを<経る> 七里圭監督『アナザサイド サロメの娘 remix』 text 永井里佳子
映画を音から作ったらどうなるか―「光も音も同じメディアに情報として記録されるようになった今、映像からサウンドトラックを意識的に引き離し、同期することを体験してみよう」(1)というコンセプトによる一夜限りのライブ上演『映画
【Interview】街とともにある「たね屋さん」の記録〜『息の跡』小森はるか監督
『息の跡』は、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市で「たね屋」を営む佐藤貞一さんの物語だ。津波で流された店舗を自力でプレハブを組み復活させ、英語や中国語を独学で学んでは、被災の手記を外国語で出版する。震災後に
【Review】かつて・そこには ニコラウス・ゲイハルター監督『人類遺産』 text 井河澤智子
かつて、そこには人々の営みがあった。これは、彼らが消え去ったのちの物語。『いのちの食べかた』(2005)『眠れぬ夜の仕事図鑑』(2011)で、「社会の黒衣」というべき存在を描いてきたニコラウス・ゲイハルター監督の最新作で
【連載】開拓者(フロンティア)たちの肖像〜 中野理惠 すきな映画を仕事にして 第44話、第45話
1980年代KID(北・板橋・豊島の女の会)の忘年会 撮影者は柴洋子さん開拓者(フロンティア)たちの肖像〜中野理惠 すきな映画を仕事にして<前回 第42話 第43話 はこちら>第44話 エルミタージュ幻想の公開RUSSI
【Interview】自身の人生を変えた「告発」の決め手――『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』物語のモデル、サイヤド・アーミル・ラザ・フセイン氏インタビュー text 若林良
現在、『ノー・マンズ・ランド』などで知られる名匠、ダニス・タノヴィッチ監督の『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』が全国で公開されている。2014年に完成しながら、一般公開は日本が世界初となるいわくつきの本作。それもそ